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株式会社ダイアグラム

Text by 吉田 望(takibi Founder)

ダイアグラムは、とても素敵な英単語である。ダイアグラム=「変数の相互作用や、何かがどのように構成されているのかを示す計画図・図面」。鈴木さんのデザインは、まさにダイアグラムの概念に基づいている。takibiは、とても良いいくつかの仕事を鈴木さんと一緒にさせていただいてきた。
takibiはブランド構築、広告販促計画を作り、それらを実行する会社である。そのためにクライアント社内のコンセンサス作りを行い、コンセプトを作り、或は選び、調査を実施する。さらにいろいろな制作物(グラフィック広告や映像、WEBサイト、POP(店頭陳列物)、ノベルティの制作と進行管理を行う。忙しい宣伝部やマーケティング部の作業を戦略や計画づくりからまるごと引き受ける会社である。従って社員は全員、ある程度器用にラフを作る能力を求められる。しかし、最終的な精密なデザインは、その仕事になるべくぴったりとテイストが合う、さらに「驚きのある正解」を一緒にじっくりと考えてくれる、プロとの共同作業になる。

デザインはブランドを作る上で、一番大事な要素だ。それは多分デザインが、ものごとを本質的に整理する仕事だからではないか。コピーとか映像は、多分その本質に何か余分なもの・・・、例えば時代のフレーバーとか、人目を引くアイデアとか、競争に勝つすこし余分な要素を付け足して成立している。しかしデザインはその商品やサービスの本質、余分な要素をなるべく排し、また重要度の順位を付けて整理する仕事だ。そうしないと良いデザインはできない。 それは戦略と直結するし、また戦略の良し悪しを表す最高の指標になる。もちろん戦略の本質を理解するデザイナーと組めば、という話ではあるが。

ということで鈴木直之さんにブランド作りをするためのデザインについて、インタビューをお願いした。お伺いした事務所はデザイナーの聖地、神宮前である。鈴木さんの事務所は、日本で先駆けとなったデザイナーズマンションにあった。事務所には夾雑な資料は何ひとつなく、全てが整理されている。窓が大きな眺めのよい会議室に、端正な容貌の鈴木さんが紺のジャケット姿でいた。

今、takibi代表の朝倉昇誠が、当時"グラフィックデザイナー"の鈴木さんに出会ったのは、約20年前。

朝倉:「ぼくは当時リクルートにいました。個人情報誌の『じゃマ〜ル』っていう雑誌のスピンアウト企画みたいな感じで「テレビじゃマール」っていうCS放送の放送局をはじめたんですけども、そのステーションロゴをつくるにあたって本体のじゃマ〜ルと、ちょっと親和性があった方がいいとなって。で、そのじゃマ〜ルを作った事業責任者の人に、誰かいい人いませんかって紹介をしてもらおうと思ったんです」

このじゃマールというのは、1995年11月から2000年6月までリクルート社から発行されていた個人情報誌である。内容としては、個人間売買を扱う情報と人との出会い(友達、サークル仲間、交際相手など)を扱う部分で構成されていた。雑誌の発想は素晴らしかったが、この機能のほとんどはインターネットメディアでオークションへと移行することとなる。そしたら、「じゃマールのロゴ作ったいい人がいるから、彼に頼んだら?」という話になって。で、鈴木さんに来ていただいきました」

鈴木氏:「20年前だから、当時30前半ぐらいですかね」

朝倉:「鈴木さんはその時まだ、タイクーングラフィックスというデザイン事務所をやっていて・・・サングラスして『どうもー』って来て。うわっ、サングラスしてきた!」と思って。
その縁を思い出して、朝倉はいきなり20年ぶりに鈴木さんに電話をかけた。

朝倉:「マクロミルはこの15年ぐらい、takibiで仕事をさせてもらってきました。最初はちょっと、かわいいキャラクターみたいな感じのロゴでやっていたんです。リサーチ会社って堅く難しく見えるから、初めて新規参入で事業をするのでカジュアルというか、かわいらしい感じを演出した方が人気出るだろうと・・・みんながクソ真面目なイメージで調査会社をやっているとき、カジュアルな、ちょっと愛くるしいイメージで、違和感を出してやっていく作戦だった。そして、それは十分に機能した時代がありました。
最初はぼくらが仕事を始めた時は、まだ30人もいない会社だったんですけど、ついには1000人超えるような会社になり、グローバル化して上海とか韓国にも会社や支店ができるようになった。

すると、あのゆるキャラみたいなロゴはまずいだろうと。虫みたいで気持ちが悪いとかアジアの人に言われたり・・ですね(笑)。ということでロゴを変えてCIをしたい、という話になりました。
その提案はコンペでした。『もともとのデザインをしたお前も、変えるのはちょっと面白くないかもしれないけど、提案してくれ』って話があって、その時、誰でやった方がいいかなって考えた時に、今度は"洗練"だろうと。かわいいから次は逆に洗練の方に振るんだろうなと思った時、洗練と言えば鈴木さんだと」

彼は、自分のセンスでは洗練系はちょっと苦手なのである。

鈴木氏:「よく思い出してもらえましたね、20年後にね。」

朝倉:「ホームページ調べていて、ホームページがあった!って。で、その時、ホームページから、覚えてらっしゃいますかって言って、連絡しました。」

朝倉昇誠は常に、プロデューサーの鑑なのである。

鈴木氏:「そしたら、覚えていただいていて。実はこういう話があるんですっていう話をしたら、やりましょうってことで、やっていただきました。ただ、全く新しい物過ぎるとどうなのか。今までに、そうはいっても10年ぐらい色々とプロモーションで蓄積して、みんなが覚えているイメージがあるので、そこはなんとなく守っていただいた方がいいと思っていたので、そこはお話しました。 CIのコンペを、受けた時の直観で、Mという文字は、やっぱり基本にあるべきだっていう話と、「矢印」をなんとなくモチーフにしたいっていう話だけ、僕の方からさせてもらったんです。」

彼はクリエイティブディレクターの鑑なのである。

鈴木氏:「ロゴデザインのリニューアル依頼としては、既存ロゴから大きな変化を求められる場合が多いのですが、全く新しいイメージに変えることが、本当にベストなのかよく考える必要があると思います。朝倉さんもさっき言ったように、変える前のロゴって社員の記憶にも残ってるし、気に入ってる人だってたくさんいるはずなんです。建築物のようにいきなりスクラップアンドビルドして、全部壊して新しく建て替えるのが果たしていいことなのか。良い部分を残して進化させるということも大事なんじゃないかと。

鈴木氏: 多くのCIやロゴを手がける仕事をしている間に、そう考えるようになりました。朝倉さんから、『こういう目玉の虫みたいなロゴはやめたいんだけど』って話しがあった時に「ここにあるDNAはなんか引き継ぐっていうは多分大事なんじゃないか」って話もいただきました。 「矢印」と「M」っていうヒントを、朝倉さんの方からもらって、それは非常にいいアイデアだなと。それを形にするなら、どんな感じがいいのか、いくつかの案を考えて提案しました」

面白いのは、矢印というディレクションである。この時にぼくもアイデア会議に出ていた。(マクロ)ミルが風車を意味するので「車」とか「風」、「動力」といったイメージを考えてみたりしたのだが・・・朝倉は矢印を選んだ。

朝倉:「矢印のアイデアは、当時マクロミルの代表だった杉本さんとの会話の直観から。杉本さんとは付き合いが長いので。今までは、『調査を早く、安く、おいしくやる』と。それこそ、リサーチャー吉野家版みたいに言われてきました。そこから事業とブランド作りを始めたんです、マクロミルのネットリサーチって。要するに安い感じっていうのが大事だったんですよ。格がありすぎると、なんかお高いんでしょう?って、クライアントから思われちゃいますから。無言で。そういうことがあって前は、かわいい、好かれる感じできました。 でも成熟して大人になってきた時に、「もう安いだけじゃないです、私たち」って話なんですよ。だから知性みたいなものもアピールしていいし、クオリティも確かだっていうブランドが必要になってきました」

しかも、マクロミルはその時、海外の調査会社を買収して、グローバルになろうとしていた。もう1つ企業のステージを上げることを「CIデザイン」でやらなければいけなくなっていたのである。

朝倉:「ネットリサーチというのはそもそも、"早い、安い、うまい"だけで十分、市場が成長出できていた産業でした。でも総合リサーチ会社になろう!と思った時、『そもそも調査って、何のためにあるの』ってベースをもう一度考えなきゃいけないかなと。
すると、そう。迷ってるから、調査をやるんです。迷ってなければ、やんなくてもよくて。このままやろうって決められなくて、迷ってるからやる。 その迷ってるっていうのは、なんなのかって考えた時に、方向。ディレクションかな?と。決める、一歩手前なんだなと。だから、決めるためにやってるってことを、どこかで、やっぱり表現すべきと思って、矢印というディレクションになったんです」

鈴木さんに、そういうディレクションは自分で全部考えたいものなのか、スタッフに出してもらった方が良いものなのかお聞きしてみた。

鈴木氏:「ぼくはデザインというのは、基本的に共同作業だと思っています。自分の中からひねり出てくるっていう感覚はあんまりないんです。何かを依頼されるわけじゃないですか。それに対して色々なことを聞いたり、自分で知らなかったことを調べたり・・・そこにどんどん近づいていくために情報をたくさん自分にインプットしていかないと『これがいいんじゃないか?』と判断できるようにはなりません。

そういう意味でいろんな可能性を検討する、常にたくさんの可能性を頭に置きながら、より良いものを考えていくプロセスです。そうすると、たまたま、アイデアの一つが何かにつながって、この色とこの組み合わせって結構いいかも、とか・・・。つながって発展する瞬間があるんです。 そういうことって、みんなで考えてアイデアを出しあわないとつながらないし、ある程度いろいろな可能性を含めて、情報をこっちでも自分の中に持っていないと、つながってかないと思います。
そういう意味では、「自由に考えてやってください」って言われることの方が、むしろ、すごく難しいですね。

鈴木さんに、そういうディレクションは自分で全部考えたいものなのか、スタッフに出してもらった方が良いものなのかお聞きしてみた。

朝倉:「仕事のスタイルは体制というか、チームをつくる場合が多いですか?」

鈴木氏:「基本的には必ずチームです。一緒にコンセプトを考えてくれる人とか。クライアントから直に仕事が来たとしても、自分は、言葉のことはやっぱりあまり考えられないわけです。だから朝倉さんのようなディレクター・コピーライターな人にチームに入ってもらうとか。
ぼくはアートディレクターとして、ブランドの意匠の監督はできるんですけど、その会社や事業がどこに向かうのかという方向性はデザインとまた別のベクトルで、企業戦略とかマーケティングの話だと思います。ただ経営戦略自体においても、今後、デザインという考え方は大切だと思っています。
仮に、チームにそういう人がいないんだとしたら、クラインアントの社内に、そういうことをきちんと整理する人間が必要で、その場で話しあったアイデアを形にするというやり方になるのでしょうね。
アイデア出しやコンセプト作りは、社内、社外に限らずチームとして行うことが多いですね。」

守り、引き継ぐブランド思考と、デザイン。
次は、朝日ネットのCIの話である。

朝日ネットのロゴ(上が旧・下が新)

朝倉:「朝日ネットさんからは、今後事業の方向も変わるし、ロゴを全く変えてもよいという話でした。takibiとしての関わり方は、マクロミルのケースとちょっと変わるんですけど、私たちが直接、鈴木さんのところをディレクションするっていうよりも、何社かを集めてコンペの場を作るっていうことが主眼でした。ですからtakibiから直接、鈴木さんに仕事を発注したのではなく、takibiの推薦を含めて調査し3-4社にコンペの依頼する、そういう形の仕事でした。takibiではまず「つなぐをつくる、つなぐをささえる。」というコーポレートメッセージを作りました。上質なネットやサービスのインフラを提供する事業でIPV6という新しい仕組みのインターネットインフラを、ISP各社は共同で行うところ、朝日ネットは独自に構築して、差別化を図ろうとされています。
また、これから単なるISP(インターネット・サービス・プロバイダー)としてだけではなく、企業やコンシューマーに違うレイヤーでのサービスや価値を付加していくという方針でした。なので当初はASAHIネットさんとお話し、全く違う見え方にした方がいいだろう。このタグラインにマッチする事のみを条件として、いかにそれに合った企業ロゴを創るか、ということになりました。

鈴木氏:「この時、朝倉さんはクライアントの、ブランディングチームのメンバーで、クライアント側のテーブルにつく人たち、でした(笑)」

朝倉:「コンペの時に各社とちょっとだけお話しさせていただいた時には、そういう経由なので、コーポレートメッセージの「つなぐをつくる、つなぐをささえる。」を活かすデザインですから、全く新しいアイデアでお願いしますって話でした。でも鈴木さんからはそれはクリアした上で、このままでも少し整えればいいんじゃない?という、+αのデザイン提案があったんです。それが刺さったんです。

鈴木氏:「シンボルの三角は残し、朝日ネットのNが筆文字のような表現だったんだけど、基本レイアウトは変えずにアレンジしました。建築でいうと、躯体は残して、内装を変えるっていうか。やっぱり、あの三角マークは、社員の方の印象に強く残っていたと思うんですね。
だからその財産を、例えばいきなり丸にしちゃったら、どうなんだろうーって。もし、変えたほうが絶対いいっていう確信がそこにあれば、丸にした方がいい!と言ったと思うんですけど。
だから、いろんな案を作りました。両方見た時に、前のロゴのイメージを残した案を皆さん評価してくださって、そっちに決まりました。

朝倉:「私は、選ぶ側にいましたが、やっぱり『はっ!』としました。確かに、こう手を加えると、いままでちょっとダサいとかと思ってたロゴが、とても洗練されてきた。ほんのちょっと、数ミリのことなんですけど、ほんのちょっとしたことに気付けるかどうかって、やっぱりすごく大きくて。鈴木さんに気付いていただけて、提案していただけた」

朝日ネットで鈴木氏とtakibiが組んで行ったブランド作業にもう1つAiSTRIX(アイストリクス)という、クラウドによる監視カメラソリューションのVI作業がある。

朝倉:「これはクライアントの有田部長が考えたネーミングで『STRIX(ストリクス)』っていうのが、ふくろうだったんです。それだけでは商標が難しく、AIっぽく、アイをつけた。

元々、キャラクター提案が欲しいと言われたわけでもなかったんです。クライアントさんと打ち合わせをする中で、まずは鈴木さんのところにお願いしたいって話がありました。ロゴを作りましょうってなった時、鈴木さんの方から、なんかモチーフがあった方がいいよねって提案がありました。『STRIXだから、ふくろうでしょ?ふくろうをビジュアル化したら?』って言っていただいて」

AiSTRIXキービジュアル

鈴木氏:「ロゴを作るにあたり、キーグラフィック、キービジュアルみたいなものが必要なんだろうなって思っていて。『それはなんですか?』って話になった時、ふくろうはネーミングにも入っていて、それをうまく具体化できないか?と話が詰まっていきました。
それと、この事業がとても先進的な技術っていうことがあります。ただ、やっぱり最終的に人間が生活するにあたって一番快適なようにするのがテクノロジーだと思いました。
そういう意味でやっぱり、デジタルとアナログっていう、どっちもあるべきだろうなという風に考えが進んで。どっちか100%でなく、両者があって初めて成立するのだろうから、それをビジュアルで再現できないかって。で、こういうことになったんです。まあ今、口で言うと確かにそうなるけど。その時はそんなことは考えてなかったかもしれないですけど(w)」

朝倉:「最近、鈴木さんのCIのお考えについてなんですけど。
ぼくはその時にふーんって思ったんですけど。CIって普通、マークとタイポグラフィーがくっついていて規定が決まってるんですけど、鈴木さんそこはフリーでいいんじゃないかって思ってますよね? 例えば、このアイストリクスのマーク、涙みたいなっていうか、目みたいな。それとタイポグラフィー。この2つの関係もばちっと決めないで、自由でいいじゃないかと?」

AiSTRIXの自由な
ロゴ組み合わせパターン

鈴木氏:「細かく決まり事を作るのが本当にいいのか?って最近は思ってます。ロゴマークって、シンボルとタイポグラフィーのセットですよっていうのが一般的な考え方。でも、どんどん変わっていくと思うんですよ、そういうの。規則はあっても柔軟に考えて、全体のブランド管理ができるんじゃないかなと思っています。

アナログな印刷物だけなら変化しないけど、今のデジタルメディアはサイズも変わるし、もう動くわけですよ。例えば、スマホで見たらとか・・・。そうなった時、固定された組み合わせが絶対ルールなのか?技術が変わると表現も変わらざるを得ないのではないか。

ネット広告のバナーもアプリも、レイアウト的に一番目立つものが最優先されるわけで。そういう技術とともに、表現の考え方も見せ方も変わってきて、それはみんな、そう思ってるんだろうなと思うんですけど。

毎日Google開くと、いろんなGoogleの絵文字みたいなのが現れるわけじゃないですか?あれは一つのブランディングの方法だろうし、もちろん、CIのレギュレーションみたいな観点で見れば、やっぱり、Googleのロゴは1個ですって話にはなるんです。その垣根っていうか境目が、見る人が多様化すればするほど、その時によって変化する。5年10年でどんどん変わってくるんじゃないかと思います。

朝倉:「鈴木さんの今言っていることを他のデザイナーに言うと『そうだね!』って多分言うと思うんですけど、でも他の人はあんまりそれをやらないんですよ。でも、鈴木さんはやっちゃう。「いいんじゃない、これで」みたいに。そこに踏み込める、最後の現実に、エクゼキューション=実行まで、行くか行かないかで言うと、鈴木さんはフットワークが軽いんです。ぴょーんと飛んでいただいけるので、こっちがはっとする。」

鈴木氏:「ある企業にCIの提案した時、ロゴを作るアプリを作って、社員が好きなロゴ作って名刺に入れられるのがいいんじゃないって考えました。そのアプリでロゴをつくるという行為が、その会社のブランディングなんだっていうことを表現したらどうですか?って提案して、アプリまで作ろうとしたんだけど、最終的には実現しませんでした」

朝倉:「Googleとかを見るとその手のはしりって、MTVなのかなと思ったんです。MTVって、ある時はロゴが手書きだったり、メタリックだったり。でも、あのフォルムは守って、その大きな約束の中で、色々楽しい感じてくれることをみんなが体験した。最後に鈴木さんに聞きたいんですけど、『鈴木直之』というブランドは、この先、どういう役割を担うんでしょう?」

鈴木氏:「肩書はアートディレクター・グラフィックデザイナーなので、そこは変わらないと思います。」

朝倉:「コミュニケーションデザイナーとか、もし言おうと思えば言えるじゃないですか」

鈴木氏:「うん。でも自分が得意で、人よりは多少何かができる分野が、いわゆるアートディレクションと、グラフィックデザインだと思っています。それは日本では、亀倉雄策先生をはじめとする多くのデザイナーが、ゼロから創ってきたこの肩書きを使って、ぼくらはその上に乗っかっている。
先人が切り開いてきた道を消すわけにはいかないんです。だから、レールはきちんと残していかないといけないんじゃないかな。それがどこまでできるか分からないですけど。とにかく作ってもらったものを、なくすわけにはいかない。だから肩書って意味では、アートディレクターとグラフィックデザイナーってことだと思います。
ただ20世紀と21世紀では、やっぱり経済の仕組みや技術、メディアが変わってきていて、当然求められることも違ってくる。そういう意味では急速に新しい職能や新しいスキルが必要になってくるのかな、と思います。ただこの仕事は結局、ある意図やアイデアをどれだけ形にできるかという仕事なので、
デザイナーと言われるなら造形力が絶対に必要です。

鈴木氏: デザイナーとして、そこは揺るがない、変わらないと思います。表現として伝える方法論が時代とともに変わるだけ。

近年では、建築物のサインデザインの仕事も多く行っています。グラフィックデザインを空間や立体物にもいかしていきたいと。専門的な図面はかけませんが、ある程度はイメージできるし、素材などの色々なアイデアも出しています。ただ実現させるのに、安全面とか取り付け、電気など専門知識が必要なので、そこはチームとして専門家に助けてもらいながら進めています。ランドスケープの1kmとか2kmの単位で考える人と、数ミリ単位でレイアウトを決めるグラフィックデザイナーでは物の見方や考え方は大きく変わってくる。グラフィックデザイナーと視点は違うけど、人間にはそもそも2つのスケール感覚が備わっていることを考えると、目指すべきゴールは一緒で、その両者の視線がうまく噛み合えば、人が使う時に、非常に気持ちのいい空間になるんじゃないかなって、そういう意識でやっています。
グラフィックデザイナーの役割を限定せず、拡張して、その経験を次につなげていく意識は常にありますよ。
デザイナーを始めた頃、写植屋さんという職業が必要でしたが、今はなくなってしまいました。これから、AI化が進んで、AIが人に変わってデザインをするかもしれない。その時に、人にしかできない発想とか経験を活かし、能力を発揮していけば、この仕事は面白そうって思ってもらえて、また次の世代の人たちが、デザイナーの道を進んでくれるとようになるといいなって思います」

朝倉:「あと最後に、鈴木さんから見て、takibiってどう思っていますか?あまり聞いたことなかったんですけど。(笑)」

鈴木氏: 「やっぱり自分が好きだろうと思っていることに、没頭している人っていうのは見ていて、こっちも楽しくなるし元気になる。20年ぶりぐらいに朝倉さんに声掛けてもらった時に、なんで自分だったのかなって思ったりもしたんですけど。どこかに自分とやったことの記憶が残っていて、思い出してもらえたんだろうなと。久しぶりに会って話しした時に、直観的にはぼくたちは作るってことに対して向いている方向性が似ているなと、すごく思いました。20年ぶりですけど、またここから色んな物を一緒に作っていけるんじゃないか、そういう予感はなんとなくあります。そういうつながり感っていうか。その仕事の仕方なり、できあがってくるものなり。あとクライアントとの接し方みたいなことは、非常に丁寧だと思います。ちょっと誤解を受けるかもしれないですけど、仕事で起きるいいことも、辛いこともポジティブに受け止めて、自分でそういうことをとても楽しんでる感じは、ありますよね。

朝倉昇誠の話は擬音語が多い。最後に、朝倉節を楽しんでいただくために、ここは校正をしないで、書いてみよう。

朝倉:「楽しんでます。丁寧すぎてね、逆にそんな丁寧にしない方が、ぽぽぽーんっていって、もっといいものできたのになって思う時は多々ありますね。ちょっと知らないでおいた方がいい時ってあるじゃないですか。ズバっといけるから。あれが、やっぱできないなーって思う自分がたまにいたりして。なんか、拾ってあげたくなっちゃうんですよね。ピュピュって。そういうのあるんですけど、でも楽しくやってると。」

拾うのになんでピュピュなのか?

次はマクロミルの制作物を手にしてのトークである。

「これも、すいません。色々何度も提案して、何度も何度も何度もね。次回は散々言って、3月から夏に向けて始動します。はい。もう、無理だって言って。生産期間も取ってくれないと、ツールの。やっぱ、物が同じになっちゃうんですよ。もう、こーんだけ10年もやってると」

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